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第三章 月明かりの下で
月明かりの下だと、何だか素直になれるよな。
そんな言葉の後に、若宮 稀一(わかみや きいち)は続けた。
「好きだ、君のことが」
蒼生(あお)の心臓が、激しく打った。
そんな。
若宮さんが、僕のことを。
僕なんかのことを。
告白された、椿 蒼生(つばき あお)は弱気だった。
「やだな。冗談でしょう? 僕のことΩだからって、あんまり馬鹿にしないで欲しいですよ」
「俺が、αが嫌いか?」
そんなはずはない。
蒼生は、いや、蒼生も稀一のことが好きだった。
容姿端麗、成績優秀な稀一を想う人間は、他にいくらでもいた。
でも、その中から僕を選ぶ理由は?
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