94 / 107

第三章・23

「でも」  あの仕打ちは、いくらなんでもひどい、と思った。  稀一さんのことは、愛している。  今でも。  だからこそ……。  蒼生は一つの決意を胸に、友人の一人に電話を掛けた。  同じテニスサークルに所属する、同じΩの親友だ。 「あのさ、僕、妊娠しちゃったみたいなんだ」 「嘘! マジ!?」 「でもね、病院に行ってみたら、想像妊娠だった、ってオチ」 「何だよ、もう。驚かすなよ」 「それで、頼みがあるんだけど」

ともだちにシェアしよう!