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第三章・25

 椿が妊娠した。  だけど、それは想像妊娠だった。  このフレーズはペアになって、テニスサークルの中を飛び交った。  心優しい者は、大変だったね、といたわり、やんちゃな者は、何やってンだよ、と笑った。  そして、稀一の耳にも入った。 「想像妊娠……!」  失敗した、と思った。  思ってすぐに、部室の蒼生を見た。 「やだなぁ。あんまり言わないでよ」  笑いながら、自分をネタに友人たちと話す蒼生の姿がそこにはあった。  途端に稀一は、蒼生が惜しくなった。  正直、名誉な話題じゃない。  だのに、笑って受け流す蒼生の強さを改めて感じたのだ。  

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