99 / 107

第三章・28

  「もう一度、付き合わないか。俺と」  そう来ると思った。  蒼生は、あまりに事が思い通りに運ぶので、おかしくなった。 「捨てた玩具が、惜しくなりましたか?」  挑むような蒼生の言葉に、稀一は少々面食らった。 「よりを戻してもいいけど、条件があります」 「何だか今夜は、蒼生らしくないな」  そうですか?   蒼生は、飄々と言ってのけた。 「これが、僕です。椿 蒼生と言う人間ですよ。それでも良ければ、またお付き合いしましょう」 「……条件、とは?」  従順なΩとばかり思っていた蒼生が、まるで高潔なαのように揺らしてくる。  稀一は、そんな姿に興味を持った。  一層、蒼生のことをまた欲しくなった。

ともだちにシェアしよう!