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第三章・29

 簡単な事です、と蒼生は言った。 「一言、僕に謝ってください」 「謝る?」  稀一は、きょとんとした。  謝る、なんて。  俺は蒼生に、何か謝るようなことをしたか!? 「ほら、ね。やっぱり自覚してない」  呆れたような、蒼生の表情。 「妊娠した、って打ち明けた時の稀一さんの言動、思い出してください」  あの時は……。  蒼生の不注意を、非難した。  避妊を怠った蒼生を叱り、浮気を疑った。 「よく考えもせず、堕ろせ、とも言いましたよね」  世間一般では、それは最低の反応です、と蒼生は笑った。

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