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第三章・31

「稀一さん……、ありがとう……」  どれだけ地に堕とそうとしても、すぐに大きな翼を広げて高く舞い上がってしまう。  稀一の誇り高い仕草に、蒼生は震えた。 「これで、また付き合ってくれるな?」 「はい」  蒼生の返事に、稀一は照れたような顔を向けた。 「はい、じゃなくて、うん、と言ってくれないか」 「え?」 「今度は対等の人間として、付き合いたいんだ。敬語はもう……、やめよう」  蒼生の瞳から、ぽろぽろと涙が零れた。 「ほら、泣かないで」 「はい……、うん……」  涙を流す蒼生の背を、稀一は優しくさすってくれた。  頬にこぼれた涙の粒を、静かに吸いとってくれた。

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