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第5話

* 璃世たちよりも先に歩き始めた藍と黒髪の青年は、すでに家の目の前にいた。 藍も青年も無言のまま歩いていた為か早足になっており、10分程で着いてしまった。 玄関を通る前に藍が青年の方を振り向くと、鎖がついている首輪のあたりが赤く擦れていることに気付いた。 「……悪かった、痛かっただろ」 藍がそう言うが、青年は真っ直ぐ藍を見つめたままきょとんとしている。 「首、擦れてる」 青年は視線を落とすが、それ以外に特に反応はない。 藍は溜息をつき、先程までより速度を落として歩き始めた。 家の中に入ると、出迎えた使用人達が目を丸くする。 質問をされる前に藍は早口で捲し立てた。 「これについては父に話しておく。まずはコイツを風呂に入れてくれ。あがったら首の怪我の手当てを。一応使用人の制服でも着せて、全て終えたら俺の部屋に連れてきて欲しい」 「頼んだ」と1番近くにいたメイドに青年を託し、藍は父親の部屋に向かう。 ノックする手は知らずに力が入り、思った以上に大きな音を立てた。 中から返事が聞こえ、藍は一つ深呼吸をしてから扉を開けて中に入った。 「……父さん、話があります。時間をいただけますか」 「今でいい、手短に」 「ありがとうございます……奴隷を1人連れてきました。使用人として働かせたいと思うのですが」 入ってきた藍にチラリと視線を向けただけの父親が、『奴隷』という言葉を聞くと動きを止める。 「藍、ついに……」 「父さん達にはご迷惑はかけません。彼の働き方については」 「ここでの仕事については私の担当から教えるよう伝えておく。上手くいけば、お前付きにしても良いだろうしな」 「……はぁ」 「まぁ気負うな。分からない方があれば私に聞け。ただし、お前が連れてきたのだから責任は持ちなさい」 そう言うと藍はの父親は仕事を再開した。 それ以上は話すことがないと言わんばかりの様子に、藍は頭を下げて部屋を出る。 もっと小言を言われるかと思ったが、案外するりと受け入れられて藍は拍子抜けしていた。 衝動的な行動が嫌いな父と、時折突飛なことをしてしまう藍。 たしなめられる事が多い藍は、今回のことについて叱られる覚悟はしていたのだが…… (心なしか嬉しそうだったのは気のせいだろうか……) 心の中でそう思いつつ、藍は自室に戻った。  

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