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第5話
「そんでな、ギルドの看護師の子達と飲みに行ったわええけどな、男共がウチのこと"なんか思ってたんと違う"言うねん。
男なんてみんなエルフがゆるふわ森ガールやと思っとるヤツらばっかりや!」
カモミールを『ミモザ』まで連れてきたはいいけど、アタシにくっついたまま離れてくれなかった。席に座ってもずっとアタシの膝に乗ったままグズグズ言ってる。見かけは若いけどアタシやママよりずっと年上の癖に。
「馬鹿ね、西のエルフはみんな誇り高い狩猟民族なんだってアンタ言ってたじゃない。
言わせておけばいいのよ」
「せやけどムカついてしゃーないわ!
エルフ・ハラスメントや!エルハラや!」
「ハイハイ」
カモミールの背中をポンポン叩いてあげていると、オーロ君がなんだかそわそわしていたわ。
アタシ今昼の仕事着のまんまだからそりゃカップルがいちゃついているようにしか見えないわよね。
でもママには一目でアタシだってバレたわ。流石よね。
「オーロ君、帰ってもいいのよ。
明日も仕事があるんだし」
「あの、お二人はどういう関係なんですか」
話聞いてた?
「ただのお店の従業員とお客さんよ。
プライベートでもたまに飲むけど、アタシ男の子の方が好きだし」
あらやだサラッと性癖暴露しちゃったわ。
でもオーロ君はそうなんですね、ってちょっと嬉しそうにしてる。
「待ちますよ、シルキーさんを送っていきます」
「ヤダ大丈夫よ、今は男の格好してるんだし」
「僕がそうしたいんです」
「シルキー、もう寝るぅ・・・」
カモミールが首にギュッと抱きついてきた。
ママが泊まっていっていいって言ってくれたからお言葉に甘えて、またお姫様抱っこして2階にあるママの家のベッドに運んであげたわ。
化粧も浄化魔法で落としといた。スッピンでも美人なのがムカつくわね。大サービスよまったく。
でもこの子いつも他人の世話ばっかり焼いてるからね。たまにはいいでしょ。
オーロ君は本当に家まで送ってくれたわ。もう日付超えちゃったわよ。オーロ君みたいにギルドの宿舎で寝泊りせずに、街の集合住宅を借りているの。オーロ君てば帰りが大変なのに。
「ごめんなさいね、付き合わせちゃって。
明日はゆっくり来ていいからね」
「いえ、お誘いしたのは僕ですし・・・それで、あの、相談事の方なんですけど・・・」
あらやだ忘れてたわ。オーロ君は下を向いて赤くなってるし。また明日にでも
「あのっ、スカイって人のこと、好きなんですか?」
オーロ君は弾けるように顔を上げて、アタシを見てきた。
「・・・そんなんじゃないわよ」
スカイ君はアイドルとか癒しみたいなものよ。だって、
「でも、あの、スカイさんの事ずっと見てましたし、好きなものとか店長さんや従業員の方に聞いていましたよね」
そうね、煙草はラッキーストライクで甘いお酒はあんまり好きじゃないけど苺のカクテルとマタタビとテオの肉入り野菜料理が好きでひっそりと読書家でギャルソンエプロンは初給料で買ったやつでビックリするとお耳がピクンとなることくらいしか知らないけどね。
「別に見てるだけでいいの。どうせスカイ君と付き合える訳じゃないし」
「で、でも、シルキーさんなら恋人なんてすぐ」
「いたわよ。恋人くらい。それこそ片手じゃ足りないくらい。でもね、それでお仕舞い。
いい年になったらみんなかわいい女の子と結婚していったわ。恋人として連れて歩くにはいいけど、奥さんにはしたくないみたい」
「・・・僕じゃダメですか・・・?」
「どうかしらね。他の人みたいに適齢期になって突然他に好きな子が出来なければいいけど」
「できません!僕と結婚してください!」
オーロ君はアタシの目を真っ直ぐ見て言ってくれた。緑の目が必死に、だけど期待を持って輝いている。
でも
「オーロ君もみんなと同じこと言うのね・・・」
結婚しようとか好きだとか愛してるとか、まー腐るほど言われたわよ。それも誠実なヤツほどサクッと結婚していくのよね。
ニューハーフなんてやってるからそんなヤツらが寄ってくるんだなんて両親に言われてムカついて、法律家になってやったら今度は近寄りがたいですって。
もうドMじゃなきゃやってらんないわよ。
なんかもう疲れちゃった。
「おやすみなさい、また明日ね」
オーロ君はまだ一生懸命何か言ってたけど、無視して締め出しちゃったわ。
あーあ、本当に明日からどうしましょう。
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