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第6話

ビックリするほどいつも通りだったわ。 まあ冒険者なんて一度誓約書にサインしたらもう会うこともないし。アタシの顔すら忘れてるヤツらばっかりよ。それもそれでムカつくわね。 ギルドの職員からいい事も悪い事もヒソヒソされるのも日常茶飯事ね。聞かないのが1番。 オーロ君もいつも通りだったわ。 アタシの顔を見ても無表情のまんまだったし。 書類の山をどさっと持ってきてサインしてくれだって。 あーもう、いい加減にしなさいよヴィーノルド・パオロ・ウヴァロッソ・ビアンコのヤツ! あらでもこのクエストってランクアップの条件に入ってなかったっけ。Bランクの昇級試験でも受けるつもりなのかしら、生意気〜。 まあいいわ。ちゃちゃっと書き直してハイ終わりっと。 ハイ次。 えーっと、甲の者を乙の伴侶にって これ婚姻届じゃないのよおおおぉぉ?! しかもこの名前って 「ちょっ・・・アラーミさん、こちらへ」 思わず噛んじゃったわよ。オーロ君は表情一つ変えずにこっちへきたわ、可愛くないわね。 「なんでしょうか」 「なんでしょうかじゃないわよ、なんなのよコレ」 ヒソヒソ声で話しかけても、オーロ君は堂々と 「婚姻届ですが?」 ってよく通る声でいいやがったわ。 この部署アタシとオーロ君だけじゃないんだからね?!ほらデスク並べてる他の職員から視線が飛んできたわよ。 不動の構えのオーロ君を喫煙所まで引っ張っていってやったわ。曇りガラスのドアを開ければ、まだ誰も居ないみたい。セーフ。 「僕は本気ですから」 オーロ君はいつもより険しい表情をしている。 「あのねえ・・・今仕事中でしょ」 「仕事中でなかったらいいんですか」 言葉に詰まっちゃったわよ。トンズラこいてたわね絶対。 「どうして駄目なんですか。僕が年下だからですか、新人だからですか」 「信用できないっつってんのよ」 「信用できない人間と仕事してるんですか」 「あのねえ・・・」 もうホント頭を抱えるしか無いわよ。こんな子だったかしらオーロ君。 「いいからサインして下さいよ、話はそれからです」 その時点で終わるわ!というか持ってきたのね婚姻届。ご丁寧に自分の欄はしっかり埋めてあるし。正直引くわ! 「あなたね、アタシをご両親に紹介できるわけ?」 「写真を見せたら父は鼻の下を伸ばし母はキャーキャーはしゃいでいましたがなにか?」 クッソチョロいご両親ね!逆に不安になるわ! 「僕とじゃ嫌ですか」 おーっとこれ壁ドンってやつかしら。 距離を詰められて身動き取れないし、かわいいけど怖い顔したオーロ君がどんどん近づいてくる。 「なによ、キスでもするの?」 オーロ君は、ピタッと止まったわ。 「その次はセックス?言っとくけどアタシ処女じゃないから」 我ながらおブスなこと言ってるわー。 だけどもう心変わりされるのはゴメンなの。かわいい男の子だけ愛でていければいいのよ。 オーロ君は黙っちゃったわ。 みるみるうちに顔が赤くなっていく。 「・・・シてもいいんですか?」 ハイイイイィ?!なんでそうなるのよ!?このムッツリスケベ! って言いたいところだけどもう口が塞がれちゃってるわよマウストゥマウスで! だぁから仕事中だっつってんでしょこのスットコドッコイ! 股間でも蹴り上げてやりたいところだけど足の間に足挟まれちゃってるから無理ね。口を開けたら案の定舌が入ってきたから思いっきり噛んでやったわ。すぐ顔を離して口を押さえてたわよザマーミロ。 「もうこの話は終わりね!仕事に戻るからね!」 「嫌です」 背中を向けたら後ろから抱きつかれたわよ。 ちょっとちょっと肩に顔を埋めない!頸の匂い嗅がない!腕に力入れない! 「細っそ・・・すげーかわいい」 誰やねんアンタ!あーヤダヤダカモミールみたいにツッこんじゃったわ。というかオーロ君の豹変っぷりにビビるわ。ホントにこんな子だったかしら。 「離してよ、人が来るから」 「嫌です。離したら全力で逃げるでしょ。 ・・・僕、必死なんですよ」 よくお分かりで。 「・・・好きなんです、本当に。だから、」 「あーもう!分かったわよ!ヤれれば満足なんでしょ?!それでもう終わりね!」 「え・・・」 「アタシん家分かるわよね?」 「え、行ってもいいんですか」 「レディを待たせたらぶっ飛ばすからね、このおブス」 喫煙所の扉を開けたら、サーっと人だかりが引いていったわ。あーもうどうにでもなればいいわよ。あーだこーだ言われるのには慣れてるわ。オカマのツラの皮と化粧の厚さを舐めんじゃないわよ。視線もヒソヒソもガン無視してデスクにかじりついて定時まで居座ってやったわ。

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