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第2話

 今日は単純に飲みたいから来た訳ではないんだ。そう思って誠也は両手を合わせて強く握る。春陽くんが、このホストクラブ、ダークエンジェルで働いている芳樹くんとデートをしている現場を目撃してしまったからだ。モヤモヤしているこの嫌な心の蟠りを晴らしたくて来た。イケメンの2人、春陽くんと芳樹くんは約3日前、仲良さそうに手を繋いで渋谷を歩いていた。誠也はこれは怪しいと思って尾行したら案の定ラブホテルに入って行った。昼間から男同士でラブホテルに入るだなんて何を目的で行ったかすぐに解る。身体を交わらせに。性行為をしに行ったんだろう。誠也は昼間にやっている仕事も渋谷、それに打ち合わせで渋谷の繁華街に行ったんだが、それを見てしまった後は正直言って仕事にならなかった。  春陽くんは何時も以上にハイペースで飲んでいたので、テンションが高くなっている。昨日の夜に観たテレビの大食いの話を面白可笑しくしていた。 「俺だってさ、何日か前から胃を膨らませれば2キロくらいは余裕で食えると思うよ」  春陽くんは体格はいいが何ていうか線が細いので大食いは、いまいち似合わない。若い、今、人気の役者のような顔立ちをしている。白い肌に茶色い髪、長いまつ毛に二重の垂れ目、芸能事務所にスカウトされたことがあると言っていたが、あながち嘘でもないだろう。 「2キロじゃダメじゃないか。あのテレビはみんな4キロ越えで食べてるよ」  誠也はチビチビとヘネシーを口に運びながら言う。ボトルは指が3本くらい残っている。今日中には飲み終わるだろう。またヘネシーをキープしてあげよう。

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