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第6話
春陽くんはテーブルの上に置いてあった、チーズクラッカーを食べると、「もう1皿頼んでもいい?」と言った。
「ああ、好きなだけ食えよ、他のもん頼んだっていいし」
「誠也くんは金持ってんな。俺なんて殆どがスーツやアクセサリーに消える」
「俺は昼間も働いているからな」
春陽くんはチョコレートを頼んだ。フードバッグもつくんだろうか。でも安いチョコレートならたかが知れてると思うから単に食べたいだけなんだろうか。誠也は春陽くんの肩に腕を回した。
「今日、アフター出来る?」
「また、ファミレスだろ?いいけどさ、誠也くん、よく身体がもつなー。俺なんか昼も仕事したら、ぶっ倒れるぞ」
「週に3日だけだからな。ホストなんか若い時にしか出来ないし、昼の仕事もしておいた方がいい」
春陽くんは持っている自分のグラスを見つめてカラカラと氷を人差し指で回して言う。
「俺、お金を貯めて将来、ホストクラブやりてえんだ。あ、歌舞伎町とかは無理に決まってるから地方でいいんだけどさ」
誠也は初めて聞いたので驚く。ホストクラブの経営か。多分思っている以上に厳しいぞ。誠也の父は昔、自分でバーを経営して失敗した。だから、無難な設計士なんかになったんだ。水商売は失敗が多い。そう教えてやりたいが夢を壊してしまったら可哀想なので黙っていた。
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