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第10話
グラスビールがテーブルに置かれた。何時もはこうしてアフターに付き合ってもらうときはコーヒーを飲むんだけれど、今日はこれからゲイバーに飲みにいくんだから、アルコールを飲み続けていたほうがいいだろう。明日、酒臭いだろうが電車通勤なので酒酔い運転の心配はしなくてもいい。誠也はゴクゴクっと炭酸水でも飲むようにビールを流し込むともう1度スマホを見た。SNSを見ながら時間を潰しているとミートドリアが届いた。トロリと溶けたチーズが乗っている。誠也はそこにスプーンを差し入れてビールと交互に口に入れた。
料理を食べ終わってもう1杯、グラスビールを注文したときに春陽くんがやって来た。誠也と似たカシミアのコートを着ている。
「おっ、早かったじゃん」
「うん、今日は売り上げが良かったからミーティングが早く終わった」
春陽くんは合い向かいの席に腰かけるとコートをソファーの上に置いた。裏地が濃い色のブルーに金色の線が入ったもので、これは高そうだなと誠也は感心した。コートまでお金を掛けるのはホストにプロ意識があるからだ。
「春陽くんもなんか食うか?」
「そうだな、シーザーサラダでも食うかな」
「珍しいじゃん、何時もはガッツリしたもんなのに」
「ゲイバーで飲みたいからな」
春陽くんはメニューを見ずに先ほどの女の子に「シーザーサラダと生中」と言った。
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