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第11話
ファミレスは深夜なのに混み合っていた。時間が時間なだけに後ろの席はキャバ嬢みたいな女の子だった。4人居たが、みんなカラーコンタクトに巻き毛がお人形さんみたいだ。生中は直ぐに運ばれて来て、春陽くんはジョッキをあげると「お疲れ」と言った。
「俺さ、2丁目で飲むなんて初めてだよ」
誠也は緊張をした顔で言った。
「俺もだよ、ゲイバーなんて初めて行く。だけど話のネタになんだろ」
春陽くんはジョッキを傾けて笑う。
「ああ、キャバ嬢って意外にBLが好きだもんな」
そう言ってから後ろの席に聞こえてないか気になったがキャバ嬢たちは楽しそうに談笑している。
「春陽がシーザーサラダを食い終わったら早速行くか?」
「ああ、今日は俺から誘ったんだからゲイバーのお金は払わせてくれ」
春陽くんはニコニコと笑う。
「いいよ、今日は俺が客だ。アフターだって俺から誘ったんだぞ」
誠也はそう言うと目を細めて笑った。
手を繋ぎたいがいきなりそんなことをして拒否られたら嫌なので2丁目まで肩を並べて春陽くんと歩いた。2丁目は歌舞伎町みたいに華やかではないが、静まり返っているわけではない。ニューハーフバーやゲイバーが入っている雑居ビルがあって、居酒屋さんもある。だから午前中のこの時間でも人通りは結構ある。でも歩いている人は男ばかりで、女の子の姿はほとんどない。怪しい雰囲気の中で手を繋いで歩いている男のカップルが多いのは流石ゲイの街だと思う。
「ホワイトローズって店なんだ。白いビルの中だって、あ、ここだ」
春陽くんはスマホの地図アプリから視線をタイルで出来たような白いビルに向けた。色とりどりの看板があって白い薔薇が書いてある店の名前がホワイトローズと光っていた。
「入ってみよう」
誠也はそう言うと春陽くんの背に手をそえた。
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