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第12話

 店の中はカウンター席だけで、まだ若い30代くらいの人が3人ほど働いているようだった。 「いらっしゃい、あ、春陽くん、来てくれたの?」  ワックスで黒髪をツンツン立たせているイケメンが口角をあげてカウンターから声を掛けて来た。 「ああ、この人、誠也くんがアフターに誘ってくれたからさ、今日は木曜日だし空いてると思ったけど結構混んでるんだな」  春陽くんが言う通りカウンター席は若い男の子でいっぱいだ。円形の椅子が並んで置いてあって、その殆どが埋まっている。 「ああ、今日はお客の入りがいいみたい。でも2人分は空いてるよ、こんなカッコいいお兄さん方は滅多に来ないもの、座れなかったら、椅子を買ってきちゃう」  男の子は笑う。いい感じの店だ。来て良かったなと誠也は思った。今日は1、2時間しか眠れないかもしれないが、明日は締め切りじゃないし、打ち合わせの予定もない。寝てたって誰も文句は言わないだろう。設計士なんて昼寝はダメだとか、姿勢を正せとか、そんなに口やかましく言われる職業じゃない。

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