13 / 66

第13話

「僕、この店を任されてる蘭丸って言います、誠也さんは何処で働いてるの?」 「俺は昼と夜、設計士とホストやってんだ。フェニックスって知らないかな」 「知ってる、フェニックスって高いんじゃない?」 「ああ、春陽くんが行ってるホストクラブの倍はする。だからと言ってキャストがいいわけじゃないぞ」 「そうなの?じゃあなんで高いの?」 「内装とかお金が掛かってるからじゃないのか?金額設定は俺にも謎だ。春陽くんみたいなイケメンがいるわけじゃないし」  誠也はにっこり笑って横を見た。春陽くんが恥ずかしそうな顔をしていた。 「何を飲み明ます?」  蘭丸さんがにこやかに言う。 「ああ、俺はブランデー、ダブルで、春陽くんは好きなもん飲めよ」 「俺は。折角バーに来たんだからカクテルにするよ。カシスオレンジにしようかな」 「春陽くん、アルコールに強いくせに、そんなジュースみたいなのを飲むのか?」 「じゃあ、カシス多めに貰おうかな。後カマンベールチーズ」  春陽くんはそう言ってコートを脱ごうとした。 「あ、上着預かりますね、2人ともカシミアなんだね、稼いでるんでしょ」 「いや、ほとんどが飲み代で消えるよ」  誠也は苦笑した。今日だって幾ら使うんだろう。明日ホストクラブで頑張って働いてもこの分は稼げないだろう。 「そうなの?でもホストってお金いいんじゃない。ゲイバーなんて国の最低賃金、時給1000円くらいなんだから」  蘭丸さんは可笑しそうに手を口に当てる。たぶんオーバーに言ってるだけだと思うがホストのほうがお金は貰えるだろう。 「でもさ、こういうところで働くのもいいね、楽しそう」 「あ、誠也くん、男が好きなの?」 「それは内緒だよー」  誠也は会話を誤魔化すが、春陽くんは誠也が気があることを知っているだろう。でなければ、男がホストクラブなんかに通わない。

ともだちにシェアしよう!