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第15話
ゲイバーは朝の4時までやるという話だった。今が2時過ぎ。ラストまでいて電車で帰ってもいいが、誠也の住むマンションは中野区だ。職場は渋谷なので行ったり来たりが大変だ。インターネットカフェで仮眠をとってそのまま会社に行くか。スーツだって2日くらい同じものを着ていても誰も気づかないだろう。誠也はそう決めるとそのことを春陽くんに話した。
「じゃあさ、ラブホテルで休んで行こうよ」
「えっ?俺と春陽くんでラブホテルに入るの?」
「ああ、インターネットカフェじゃあ、休めねえよ。ぐっすり寝るんだったらベッドの方がいい」
蘭丸さんが「いいじゃん、渋谷のラブホテルに泊まれば、会社だってそのまま行けるでしょ」と言う。
「それもそうだな」
誠也は欠伸を噛み殺した。いい加減もう眠い。
「蘭丸さん、お会計して、もう帰るから」
春陽くんがカシスオレンジのグラスを空にしてから言う。
「もう帰るの?」
「こいつ、明日仕事だからさ、渋谷まで行かなくちゃだな、車呼んでくれる?」
春陽くんは誠也を見ながら言う。
「うん、車なら、すぐに来ると思うよ。そう、また来てね」
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