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第17話
誠也は一番金額設定の高い部屋を選んだ。エレベーターで5階に上るとドアの上に部屋番号があってグリーンに点滅していた。
「入ろうか」
今度は誠也が率先して部屋に入った。中はローテーブルが置いてあって、2人掛けのソファーがあった。真ん中にはダブルベッドが置かれている。黒と赤を基調とした、綺麗な部屋だ。壁にはピカソみたいな絵が掛けてあった。
「風呂入ろうかな」
誠也はコートを脱いでスーツ姿でソファーに座って言った。
「俺も入りたい。誠也くん、一緒に入ろうか」
春陽くんはコートをハンガーに掛けながら言う。
「マジ?でも俺は早く寝てえから浸かんないぞ」
「えー、ダメだよ。まだ3月だし、身体を温めてから寝たほうがいいよ」
「時間ねえし、もう3時だぞ」
「有給貰えばいいじゃん」
「あのなあ、有給は当日にすぐ取れないの。まあ、いっか、風呂くらい一緒に入ってやるよ。今、溜めてくる」
誠也は苦笑しながら浴室へ行き、ジャグジーがついた円形のバスタブにお湯を入れた。春陽くんの裸が見れると思ったら気分が高まる。そうだ、風呂が溜まるまで芳樹くんとのデートの話を追求して訊いてみようか。ラブホテルに入ったのを見てしまったこと。でもちょっと聞くのが怖い。やめた、やめた。今こうして2人でラブホテルに居るんだし、春陽くんだって誠也に多少気があるのは間違いない。自分で自分を追い詰めるのはやめようと思った。
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