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第25話

 設計事務所は渋谷駅から歩いて10分ほどのところにある。カフェを出て春陽くんと別れると坂道を歩いて雑踏に歩調を合わせる。設計事務所はコンクリートのむき出しの建物で家具はデザイナーが設計してくれたお洒落なものだ。流線形のテーブルと椅子が置いてあって、パソコンにはCADという図面を書くソフトが入っている。席に腰かけると事務職の理沙ちゃんが「遅刻なんて珍しいですね」と言った。 「ああ、風邪気味で病院に行って来た」  苦しい嘘をついてしまったが男の子とラブホテルに居ただなんて言えない。 「大丈夫ですか?今、そんなに忙しくないんだから休めばよかったのに」 「いや、そこまでじゃないよ」  ただでさえ遅刻したことに罪悪感があるのに休むだなんてとんでもない。  仕事は6時に終わった。今、手掛けているのは原宿の美容院だ。下見に行ったのだが、若者の多さに圧倒された。新宿で働いているから人込みには慣れているが、新宿と原宿はファッションも違うし、人の放つオーラみたいなものが違う。1人では到底行く気になれないが、今度、春陽くんを誘ってタピってみるのもいいかもしれない。誠也はまだタピオカを食べたことがない。  誠也は新宿に行って、自身の勤めているホストクラブに入って行った。今日は午後の休憩時間に沢山のお客さんにメールやLINEを打っておいた。金曜日なので客を呼べるだけ呼ぼう。いっぱい稼いでダークエンジェルに通う資金にしなければいけない。でも春陽くんと身体を交わらせたんだから足繁く通う必要もないか。昨日行ったゲイバーのホワイトローズでデートをしてもいいな。

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