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第29話
お客さんは次から次へと来て誠也は何個もテーブルを掛け持ちした。ヘルスで働いている女の子がシャンパンタワーをしてくれて大いに盛り上がった。10時くらいになった時、誠也のスマホが着信を告げた。客から連絡がある場合があるのでマナーモードにしてあるがスマホは持ち歩いている。画面を見ると実家から電話のようだった。
「ちょっと失礼」
そう言ってシャンパンタワーで盛り上がっているお客さんに笑顔を振りまいてロッカールームへ行った。実家に掛け直すとお母さんが出た。
「誠也、いきなり電話してゴメンなさいね。実はお父さんが倒れちゃったの」
「えっ」
「救急車を呼んだんだけどね、危ないらしいの。誠也、帰って来れる?」
「ああ、今日はもう無理だから、明日一番に行く。いったいどうしたんだ?」
「脳の動脈瘤が破裂したんだって。今ね、地元の脳外科にいるの」
「分かった、お母さん、気をしっかりな」
誠也は電話を切ると今からタクシーで駆けつけるか迷ったが、泊まることになるだろうから、それなりの支度が必要だ。お父さん大丈夫かな。心配だ。
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