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第30話
「誠也くん、どうしたの、顔色が悪いみたい」
ヘルスで働いている女の子が心配そうな顔をする。
「いや、何でもない。俺はみんなが気持ち良く飲んでくれればいいんだ。ドンペリは美味しい?」
「うん、誠也くんがいると何でも美味しい」
誠也はゆっくりグラスを傾けてシャンパンを喉に流し込んだ。
12時にホストクラブの仕事を終わらせ帰路に就く。明日は5時に起きてなるべく早く実家に帰ろう。そう思うと布団に潜り込んだ。昨日見た春陽くんの裸を思い出す。お父さんに何かあったら3日くらいは会えないな。会社は休んでも構わないんだが春陽くんに会えないのはつらい。
次の日は予定通りの時間に目を覚ます。春陽くんに埼玉に帰ることを言いたいが、きっとまだ寝てるだろう。誠也はコーヒーを作ってそれを飲んだ。ニュースを観ながらお母さんに電話を入れる。
「あ、どう?お父さんの具合」
「ダメ、意識が戻らないの」
「分かった、急いで行くから」
誠也は紺色のセーターにデニムをはいて家を出た。住んでいる場所からは一旦新宿まで行ってそこから湘南新宿ラインに乗らなければいけない。お父さん助かってくれよ。誠也は祈るような気持ちになった。
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