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第33話

 夕方になるまでお母さんとロビーに居た。5時になった頃に看護師さんから面談室に呼ばれた。中には眼鏡をかけた太った医師が待っていた。 「心配させるのも悪いですが非常に危険な状態です。くも膜下出血といえば分かりますか?」 「はい」 「はい」  誠也とお母さんは同時に返事をした。 「ご家族の方はつらいでしょう。我々は全力を尽くしてます。でも医療には限界があることを理解しておいてください」  お母さんはガタっと揺れた。眩暈でもしたのだろうか。誠也はお母さんの肩を抱くと面談室を出た。 「兎に角、ここにずっと居てもしょうがない、一旦、家に帰ろう」 「そうね」  病院の前に停まっていたタクシーに乗って家に向かう。着替えを数着持ってきて正解だった。明日は日曜日、でも会社は簡単に休めない。ここから通うしかないか。お母さんを1人にするのは心配だ。ホストクラブは1週間くらい休んだ方がいいだろう。お客さんが心配するかもしれないからメールやLINEを打っておくか。  夕食は誠也がスーパーに買い物に行って野菜炒めの材料を買って来た。豚肉も入れようと思って小間切れも用意した。これくらいなら問題ない。1人暮らしをしているから簡単な料理は何時も作っている。お母さんは出前でもいいと言ったが、これから数日間はここに帰ってくるのだから休日くらいは手料理を作ってあげたい。大学まで出して貰っているんだから親は大事にしなくてはいけない。

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