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第34話

 わかめスープも添えてあげて、簡単な夕食を食べ終わると、LINEの音がピンポンと鳴った。画面を見ると春陽くんからだった。急いで既読する。 「誠也くん、どれくらい埼玉県にいるの?」 「うーん、分からない。でも会社は行くから都内には行くぞ」 「じゃあ、火曜日、お昼を食おうか?」 「ああ、いいよ、今のところ打ち合わせの予定もないし、手掛けているのは原宿の美容院だけだ。ゆっくりランチしよう」  誠也はメッセージを打つとお母さんの顔を見た。お母さんは「彼女?」と訊いて来た。 「ああ、そんな感じかな」  まさか彼氏がいるなんて言えない。 「彼女が心配してるなら、お母さんが説明してあげようか?暫く会えないかもしれないじゃない」 「ああ、いい、理解があるから大丈夫だよ。それに昼間に会う」 「そう」  誠也はすまないような気持ちになった。  月曜日は特急に乗って会社に行き、ホストクラブは休んだ。店長は心配してくれたが必ず来週には店に出るからと約束をして1週間の休みを貰った。火曜日も特急で会社に行く。出社して直ぐ9時に原宿の美容院が打ち合わせをしたいと言って来た。間取りを変えたいらしい。11時くらいには終わりそうだから、春陽くんを呼び出してタピるのもいいな。お昼を食う約束をしているし、打ち合わせが長引いたと言えば遅く会社に戻っても誰も咎めないだろう。誠也は春陽くんにLINEを打った。 「春陽くん、今日仕事で原宿に行くんだ。出て来ねえか?」 「ああ、いいよ、何時に行けばいい?」 「11時にするか?原宿の前にエムズっていうカフェがあるんだ。そこで待ってるよ」 「りょうかい、着いたら一応LINEする」  誠也はそれを既読してから会社を出た。

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