35 / 66

第35話

 打ち合わせは簡単に終わった。まだ10時30分だ。ぶらぶら雑貨屋さんなどを見て歩く。お洒落なショップがたくさんあった。お母さんにストールでも買ってあげようか。誠也は紫色とピンクが混ざったような綺麗なストールを買った。  待ち合わせをしているカフェに入ると、ホットコーヒーを注文する。タピオカを飲む予定だったのだが、いきなり男が1人で来てタピオカミルクティーをくださいなんて恥ずかしい。春陽くんは5分後くらいにダッフルコートを着て現れた。 「春陽くん」  誠也は片手をあげる。 「おお、待った?」 「いや、ショッピングしてた。女もんのストール」 「えっ?客にプレゼント?」 「いや、親にだよ。そうか、春陽くんは客にプレゼントをあげるのか。俺は何も貰ったことねえぞ」 「いや、いや、去年あげたぞ、誕生日に花束」 「ああ、そうだった」  誠也はニッコリ笑って、春陽くんの腕を握って自分の方へ引き寄せた。 「俺、時間とれそうだよ。春陽くんの行きてえところに行く」 「じゃあ、木曜日に行ったとこがいいって言ったらどうする?」  誠也は「ふふ」と笑った。 「ゲイバーか?」 「んなわけねえだろ。渋谷だよ」  春陽くんは可笑しそうに口角をあげた。 「じゃあ、移動するか?タクシーで渋谷まで行こう」  誠也はそう言うとロングコートを羽織った。

ともだちにシェアしよう!