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第35話
打ち合わせは簡単に終わった。まだ10時30分だ。ぶらぶら雑貨屋さんなどを見て歩く。お洒落なショップがたくさんあった。お母さんにストールでも買ってあげようか。誠也は紫色とピンクが混ざったような綺麗なストールを買った。
待ち合わせをしているカフェに入ると、ホットコーヒーを注文する。タピオカを飲む予定だったのだが、いきなり男が1人で来てタピオカミルクティーをくださいなんて恥ずかしい。春陽くんは5分後くらいにダッフルコートを着て現れた。
「春陽くん」
誠也は片手をあげる。
「おお、待った?」
「いや、ショッピングしてた。女もんのストール」
「えっ?客にプレゼント?」
「いや、親にだよ。そうか、春陽くんは客にプレゼントをあげるのか。俺は何も貰ったことねえぞ」
「いや、いや、去年あげたぞ、誕生日に花束」
「ああ、そうだった」
誠也はニッコリ笑って、春陽くんの腕を握って自分の方へ引き寄せた。
「俺、時間とれそうだよ。春陽くんの行きてえところに行く」
「じゃあ、木曜日に行ったとこがいいって言ったらどうする?」
誠也は「ふふ」と笑った。
「ゲイバーか?」
「んなわけねえだろ。渋谷だよ」
春陽くんは可笑しそうに口角をあげた。
「じゃあ、移動するか?タクシーで渋谷まで行こう」
誠也はそう言うとロングコートを羽織った。
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