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第40話

 遅くなってしまったが職場に戻ると、今日打ち合わせをした原宿の美容院の設計変更の図面を書く。お昼を食べなかったのでグルグル、グルグルとお腹が鳴った。事務職の理沙ちゃんにも聞こえたらしく頬をあげて笑われた。 「何か買って来ましょうか?お腹が空いていたら、集中出来ないと思いますし簡単なもの入れた方がいいんじゃないですか?おやつ買いに行くんでついでに食べ物買って来ますよ」 「あ、じゃあ、お握りを頼もうかな」 「具は何がいいですか?」 「何でもいい。任せる」  誠也は嫌いな食べ物がない。でも以前お客さんに沖縄みやげでハブ酒を貰ったときは不味いと思った。味わって飲むものではないのかもしれないが生臭くて閉口した。嫌いなものはそれだけだ。沖縄人には悪いが、人間の飲むものではないと吐きだしそうになった。歳をとったら飲めるようになるのかもしれない。    理沙ちゃんは鮭と昆布のお握りを買って来てくれた。春陽くんは何か食べたのだろうか。ラブホテルで何か頼んであげれば良かったな。まあ、ホストクラブは7時からだから何も食べないで行くことは無いだろう。誠也はそう思ってうんうん頷いた。理沙ちゃんがハテナという顔をした。誠也は口角をあげてからペットボトルのお茶を飲んだ。

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