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第58話
飲み物はビールとハイボールにした。サラダを籠に入れてレジで店員の女の子に、春巻きとフランクフルト、フライドポテトを注文する。川辺に戻って春陽くんに「ほらよ」と言って飲み物を放り投げた。
「桜、綺麗だな」
「ああ」
「来年も再来年もこうして花見したいな」
そうだ。春陽くんは本当に埼玉県に住むつもりなんだろうか。
「春陽、この近くに住むって言ってたな」
「ああ、この前行ったホストクラブ、あそこで働こうかな。感じのいい店だったろ」
誠也は春陽くんを抱きしめた。
「ちょっ、こんなところでマズいって、飲んだらラブホテル行こうか?」
「ああ、そうだな、飲み終わったらお父さんの顔を見てタクシーを呼ぼう。インターの近くにホテル街があるんだ」
「タクシーの運転手にラブホテルまでって言うのか?」
「いや、近くに焼肉屋がある、ホラ、以前さ、春陽くん、大食い出来るって言ってただろう。食べ放題の焼肉屋だから好きなだけ食え。奢ってやるよ」
誠也はそう言うとグビグビっとハイボールを飲んだ。桜の花が散って春陽くんの茶色い髪のうえに乗った。
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