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第59話

 2時間くらい屈託のないお喋りをして病院に戻った。看護師さんが忙しそうに病室を行き来していた。 「何かあったんですか?」 「ええ、意識が戻ったみたいです」 「えっ?」 「お母さんに連絡をしてください」  誠也は驚いた。急いでスマホからお母さんに連絡をいれる。 「お母さん、お父さんの意識が戻ったんだって、病院に来れる?」  お母さんは電話の向こうで息を飲んだようだった。 「ほんと?ああ」  泣き崩れたお母さんの姿が見えるようだ。  春陽くんに事情を説明してラブホテルは延期にした。 「良かったな」 「ああ、お前のおかげだよ」 「俺は何もしてねえぞ」  誠也はそれでも春陽くんが来てくれたからだと思った。数日経過したら、お父さんは奇跡の回復をして病室の窓から景色を見るようなゆとりも出来るようになった。  今日は会社のみんなで上野公園で花見をする日だ。金曜日だから席を取る人の数がかなり多かった。誠也は小説を読みながら午後の日だまりの中、レジャーシートの上に座って幸せな気持ちに浸っていた。実家にも戻らなくていいことになったし、ホストクラブで働くのも続けられる。春陽くんが働いているダークエンジェルにも、また行く事が出来るし、ゲイバーにも遊びに行ける。そういえば蘭丸さんたちを誘って花見をしようという計画があった。春陽くんに連絡を取って貰ってまた、ここに来てもいいな。

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