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第60話

 ピンポン、LINEが鳴った。早紀ちゃんからだ。今日席取りをしていることを知っているので連絡をして来てくれたんだろう。 「誠也くん、今、上野?」 「そうだよ、ポカポカ気持ちいいよ」 「ねえ、私も友達と上野に行くの、夜、誠也くんが花見終わったら会わない?」 「ああいいけど」  今日はホストクラブには休みを貰っている。だが女の子と会うなんて春陽くんが妬くかな。でも、お客さんだし、大事にしなくてはいけない。 「じゃあ、上野公園に着いたらLINEする」  早紀ちゃんはそうメッセージを送ってきてハートのスタンプも送って来た。  7時になって会社のみんなは朗らかに笑いながらやって来た。公園は提灯の灯りと桜をライトアップしている光で思っていたより明るかった。スーツ姿のみんながレジャーシートの上に座る。 「綺麗だな、さあ、飲もう」  部長が言う。理沙ちゃんが「あまり飲み過ぎないでくださいね」と苦笑した。 「いいじゃないか。明日は休みだぞ」  そうだ。明日は土曜日、今日はゆっくり出来るんだった。ならば早紀ちゃんとの約束を断って花見が終ったら春陽くんの居るホストクラブに行く方がいい。ダークエンジェルは混んでいるだろうが、その後、ゲイバーのホワイトローズに行って、飲みたい気分だ。春陽くんとのラブホテルの約束も保留のままだし、あの白い肌の身体をまた抱きたい。

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