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 吉野くんは何も言わない。  仕方なく、というか、全部俺の責任なので、澤村くんに聞いた。 「……何すればいいんですか?」 「お前はそこで寝っ転がってろ。吉野は何でもいいからそいつをイかせろ」  嫌だ。そんなものをこんなにたくさんのひとの前で見せるくらいなら、死んだほうがマシだ。  無理は承知で澤村くんに目で訴えたけど、ただポケットから新しいたばこを取り出すだけで、何も言わない。  すると、吉野くんが、そっとキスしてきた。  びっくりして固まっていると、唇をくっつけたまま、片手で俺の頭を支えつつ、そっと体重をかけて、俺を寝転ばせた。  そして、耳元でささやく。 「くわえるから。適当にイッたフリして」 「え……?」 「出すとこ見られるよりマシでしょ」  そう言うなり、吉野くんは俺のベルトに手を掛けた。  恥ずかしい。吉野くんは嫌じゃないの?  混乱している間に、下着ごとズボンを下ろされて、太もとの半分くらいまでが晒されてしまった。 「気持ちわりー!」 「おえー」  泣きたくて、両腕で目と口元を覆った。  するとすぐに、吉野くんは俺のものをくわえた。 「ぅゎ……っ」  何の心の準備もなしにあったかいものに包まれて、思わず変な声が漏れる。 「え!? フェラ!?」 「あはははやっぱ吉野ガチじゃん!」 「オラ、倉持喘げよ」  不愉快な気持ちでいるはずの吉野くんのためにも、なるべく早くイッたフリをしないと。  顔は見せないように、息を詰めて、じっとする。  フリ、フリ……そうしなきゃいけないのに、初めての感触に本当に気持ち良くなってきてしまって、少しずつ息が上がってきた。  口の中のものも、固くなってきているのが分かる。 「吉野くん……だめ、ん……」  拒否してみるけど、やめてくれない。  早く終わらないと、いつまでも苦しい思いをさせてしまう。  でも体は反応してしまっていて、せめて顔を見られないように、腕で隠すので精一杯。 「よ、……よしのくん、離して、……はなして、だめ」  完全に固くなってしまった。  これじゃあ、イッたふりをしても、ガチガチのままでバレてしまう。  吉野くんに苦しい思いをさせるくらいなら、別に見られてもいいから、手でしてもらった方がいい。 「よしのくん、ぁ……っ、口、むり……離して、ダメ、だめっ、ん……」  体をよじってみたけど、吉野くんは頑なだ。 「きっもちわりー」 「もっとアンアン言えよ!」  好き勝手言う外野の声もだんだん遠くなってきて、ダメだという気持ちと、体の反応が、どんどんちぐはぐになってくる。  吉野くんは、ペニスの先端に口をつけたまま、根本をしごきはじめた――彼も、フリは無理だとあきらめたのだと思う。 「ぁ、ん……よしのくん、ごめん、ごめ……、んっ、ん……っ」  泣きながら謝る。  謝りながらも、熱が真ん中に集まってくる感じがして、本当に限界。 「あっ、やだ、……もぉ、ん……っ、離して、吉野くん、……ぁあ、くち、はなしてっ」 「よしのーぜってー離すなよー」  桜井くんが、気の抜けた声で命令する。  しごく手が、スピードを上げる。 「はあ、ぁ……、だめ、あっ、出ちゃう、や……、ぁあッ、ん……っんん………ぁあっ……ッ!……!」  体がビクビクと小さく揺れて、口の中に、たくさん出してしまった。 「うわーマジでイッたー!」 「ガチホモ変態おめでとー!」  全身の力が抜けて、涙がぼろぼろとこぼれる。  吉野くんはすっと体を起こして、俺のズボンを上げてくれた。  おそるおそる見る。吉野くん、飲んじゃったんだ……。  澤村くんは、やる気なさげに言った。 「じゃ、全員700円。明日もやるから他の奴も連れて来いよ」  明日も……。  もうダメだ、これ以上吉野くんに迷惑かけるわけにはいかない。 「あの、澤村くん。お金持ってきます。親の財布見てくるんで。だからもうこういうのは許してください」 「あ? 無理」  即答だった。 「お前がちょろっと小銭ネコババしてくるより、こっちの方が儲かるもん」  今日は10人以上いた。少なくとも7,000円。  これはもう、ずっとやらされるかも知れない。  呆然としながらソファに座っていると、松田くんが、出口に並ぶひとたちのスマホをチェックしながら言った。 「もっと宣伝しないとじゃない?」  澤村くんはしばらく考えた後、俺たちに向かって低い声で言った。 「お前ら、先公がいる時以外、ずっと手繋いでろ」 「えっ?」 「倉持、お前吉野にばっか色々させて、ノーリスクすぎんだろ。教室ではお前からキスなり抱きつくなりなんなりしろ」  見せ物って……もうずっと? 無理だ。耐えられない。  しかし、そんな俺の考えを見透かすように、松田くんが言った。 「どっちかが学校来なくなったら、回すよ」 「回す……って?」 「溜まってそうな奴集めて、全員お相手。倉持、休んだら吉野がそうなるんだから、絶対来てね。吉野は休みたければどうぞ。元はと言えば倉持が悪いからね。ほんとは、回す方が楽に金取れるし」  絶望した。  来たらこれをさせられる。  でも休んだら、吉野くんが酷い目に遭う。  吉野くんの顔をそっと見ると、こんなことを言われてもなお、無表情で黙ったままだった。

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