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デート当日ーー 待ち合わせの場所である時計台の下で俺は翔也さんを待っていた。 待ち合わせ10分前に颯爽と現れた翔也さんは流石のイケメン。人々の目線を全て捕らえている。 「お待たせ。待ったかな?」 「いや、全然。大丈夫です。」 「そっか。それなら良かった。ドライブデートしようと思うんだけど、いいかな?」 「はっ、はい。」 ど、ドライブデートだと…。大人デートだ。やばい、俺大丈夫かな。そもそもドライブデートって何すんだ…。 車を停めているという駐車場に向かう途中、手を繋がれた。 えっ?え? 戸惑う俺に翔也さんは微笑む。 「男と手繋いでたら変に思われますよ。」 「俺は気にしないけど、皐月くんは嫌?」 「ゔっ、嫌じゃない…。」 嫌じゃないけど、なんかムズムズする。こう、なんか、恥ずかしい‼︎ 「皐月くん、どうぞ。乗って。」 誰もが知ってる高級車。俺をその車の助手席に乗るように促す。中もピカピカでよく管理が行き届いている。 前から思ってたけど翔也さんって凄い人なんじゃ…。 「ん?どうした?」 「翔也さんって何者なんですか?」 「何者って…。ただの人って、そんなこと聞きたいわけじゃないか。一応会社の社長をしているかな。」 しゃ…社長⁉︎全く気取ってないのに社長⁉︎ 世の中理不尽だ。 「社長なのにな俺といっしょにいていいんですか?」 「ちゃんと仕事なら終わらせたよ?」 「そうじゃなくて…俺と休日過ごしていいのかってことで…。社長ならモテるでしょ?それにほらっ、親に決められた婚約者とか‼︎」 「今の時代親が決めた結婚なんて流行らないよ。それに俺は皐月くんを本気で好きだよ。」 本当に俺のこと好きなのか…。 「でも、立夏がこの前タチもネコになれるって…。」 「俺がネコ?ふふっ、面白いことを言うな。皐月くん、知ってる?この世にはないバリタチって言葉があるんだ。彼らは死んでもネコになることはないんだよ。」 「まじでか…。じゃあ、翔也さんは…。」 「うん、俺はバリタチだから大丈夫だよ。むしろ、俺より立夏くんがネコになる可能性が高いから安心して。」 「立夏がネコになるんですか?」 「可能性の話だよ。」 立夏がネコ…。 にゃーと鳴く立夏を想像する。 似合わない…。 「そういえば、どこに向かってるんですか?」 「水族館だよ。皐月くんにはつまらないところだったかな?やっぱり遊園地とかの方が…。」 「俺、水族館好きですよ。もちろん遊園地も好きだけど、水族館って綺麗だし‼︎あっ、翔也さん。俺、イルカのショーみたいです。」 「そっか。ショーの時間確認しながら見て回ろうか。」 その後、翔也さんと水族館で魚を見て回った。イルカのショーでは水しぶきが少し飛んできて、2人で笑った。 「あー、久々に心置きなく遊んだかも。」 「楽しんでくれて良かった。皐月くん、もう少しドライブ付き合ってくれるかな?」 「はい。もちろんです。」 翔也さんが連れてきてくれたのは海だった。白い砂浜に足跡は一つもない。心地よい風が靡いて、髪を撫でる。 「今日は皐月くんにこの景色を見せたかったんだ。この時期にしか見えないんだけど、今日が晴れて本当によかった。」 茜色の世界。 その美しい夕日が空を海を真っ赤に染める。 初めて見た光景に言葉が出てこない。 「気にいってくれたかな?」 「はい。すごくきれぇ。」 「皐月くん。俺はね、本気で君が好きだ。君が立夏くんと何かあったのは見ていたら分かる。君が立夏くんを選ぶっていうんだったら俺は諦めるよ。 ただね、立夏くんに取られるっていうそんなあり得ない理由のせいで、君から俺という選択肢を消されるなんて我慢ならない。 選ぶのは君だ。ただ、僕は君を誰よりも愛していることは理解していてほしい。」 なんだ、なんだこれ。 最大級の告白。 何歳も年上の大人な男。 この前あったばかりの人。 でも、間違いなく本気だってことは伝わってくる。 「俺は…。」 「決めるのは今じゃなくていい。君を困らせたくないんだ。」 「あっ…ごめんなさい。」 「いいんだよ。それより皐月くんお腹は空いてない?」 お腹に手を当てて考える。ぐぅ…小さな音が空腹を表していた。コクリと頷くと翔也さんは笑って俺の頭を撫でた。 「お肉は好きかな?焼肉屋さんを予約したんだけど、大丈夫だったかな?」 「焼肉⁉︎好き‼︎」 「それは良かった。…ふふっ、やっぱり皐月くんは笑顔が一番だね。」 いちいち女の子をときめかすような言葉を使う。まさか翔也さんはプレーボーイなのでは? 「車に乗って。直ぐに着くから。」 翔也さんに連れてきて貰った焼肉屋の肉は柔らかくて、死ぬほどうまかった。 ただ、半分出そうとお金を出したら翔也さんに止められた。スマートにお金を支払われ、財布をしまわされた。 因みに焼肉屋さんの値段は断固として教えてはくれなかった。 こうして、翔也さんとのお出掛けは幕を閉じた。 ように思われたのだが…。

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