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⑦
デート当日ーー
待ち合わせの場所である時計台の下で俺は翔也さんを待っていた。
待ち合わせ10分前に颯爽と現れた翔也さんは流石のイケメン。人々の目線を全て捕らえている。
「お待たせ。待ったかな?」
「いや、全然。大丈夫です。」
「そっか。それなら良かった。ドライブデートしようと思うんだけど、いいかな?」
「はっ、はい。」
ど、ドライブデートだと…。大人デートだ。やばい、俺大丈夫かな。そもそもドライブデートって何すんだ…。
車を停めているという駐車場に向かう途中、手を繋がれた。
えっ?え?
戸惑う俺に翔也さんは微笑む。
「男と手繋いでたら変に思われますよ。」
「俺は気にしないけど、皐月くんは嫌?」
「ゔっ、嫌じゃない…。」
嫌じゃないけど、なんかムズムズする。こう、なんか、恥ずかしい‼︎
「皐月くん、どうぞ。乗って。」
誰もが知ってる高級車。俺をその車の助手席に乗るように促す。中もピカピカでよく管理が行き届いている。
前から思ってたけど翔也さんって凄い人なんじゃ…。
「ん?どうした?」
「翔也さんって何者なんですか?」
「何者って…。ただの人って、そんなこと聞きたいわけじゃないか。一応会社の社長をしているかな。」
しゃ…社長⁉︎全く気取ってないのに社長⁉︎
世の中理不尽だ。
「社長なのにな俺といっしょにいていいんですか?」
「ちゃんと仕事なら終わらせたよ?」
「そうじゃなくて…俺と休日過ごしていいのかってことで…。社長ならモテるでしょ?それにほらっ、親に決められた婚約者とか‼︎」
「今の時代親が決めた結婚なんて流行らないよ。それに俺は皐月くんを本気で好きだよ。」
本当に俺のこと好きなのか…。
「でも、立夏がこの前タチもネコになれるって…。」
「俺がネコ?ふふっ、面白いことを言うな。皐月くん、知ってる?この世にはないバリタチって言葉があるんだ。彼らは死んでもネコになることはないんだよ。」
「まじでか…。じゃあ、翔也さんは…。」
「うん、俺はバリタチだから大丈夫だよ。むしろ、俺より立夏くんがネコになる可能性が高いから安心して。」
「立夏がネコになるんですか?」
「可能性の話だよ。」
立夏がネコ…。
にゃーと鳴く立夏を想像する。
似合わない…。
「そういえば、どこに向かってるんですか?」
「水族館だよ。皐月くんにはつまらないところだったかな?やっぱり遊園地とかの方が…。」
「俺、水族館好きですよ。もちろん遊園地も好きだけど、水族館って綺麗だし‼︎あっ、翔也さん。俺、イルカのショーみたいです。」
「そっか。ショーの時間確認しながら見て回ろうか。」
その後、翔也さんと水族館で魚を見て回った。イルカのショーでは水しぶきが少し飛んできて、2人で笑った。
「あー、久々に心置きなく遊んだかも。」
「楽しんでくれて良かった。皐月くん、もう少しドライブ付き合ってくれるかな?」
「はい。もちろんです。」
翔也さんが連れてきてくれたのは海だった。白い砂浜に足跡は一つもない。心地よい風が靡いて、髪を撫でる。
「今日は皐月くんにこの景色を見せたかったんだ。この時期にしか見えないんだけど、今日が晴れて本当によかった。」
茜色の世界。
その美しい夕日が空を海を真っ赤に染める。
初めて見た光景に言葉が出てこない。
「気にいってくれたかな?」
「はい。すごくきれぇ。」
「皐月くん。俺はね、本気で君が好きだ。君が立夏くんと何かあったのは見ていたら分かる。君が立夏くんを選ぶっていうんだったら俺は諦めるよ。
ただね、立夏くんに取られるっていうそんなあり得ない理由のせいで、君から俺という選択肢を消されるなんて我慢ならない。
選ぶのは君だ。ただ、僕は君を誰よりも愛していることは理解していてほしい。」
なんだ、なんだこれ。
最大級の告白。
何歳も年上の大人な男。
この前あったばかりの人。
でも、間違いなく本気だってことは伝わってくる。
「俺は…。」
「決めるのは今じゃなくていい。君を困らせたくないんだ。」
「あっ…ごめんなさい。」
「いいんだよ。それより皐月くんお腹は空いてない?」
お腹に手を当てて考える。ぐぅ…小さな音が空腹を表していた。コクリと頷くと翔也さんは笑って俺の頭を撫でた。
「お肉は好きかな?焼肉屋さんを予約したんだけど、大丈夫だったかな?」
「焼肉⁉︎好き‼︎」
「それは良かった。…ふふっ、やっぱり皐月くんは笑顔が一番だね。」
いちいち女の子をときめかすような言葉を使う。まさか翔也さんはプレーボーイなのでは?
「車に乗って。直ぐに着くから。」
翔也さんに連れてきて貰った焼肉屋の肉は柔らかくて、死ぬほどうまかった。
ただ、半分出そうとお金を出したら翔也さんに止められた。スマートにお金を支払われ、財布をしまわされた。
因みに焼肉屋さんの値段は断固として教えてはくれなかった。
こうして、翔也さんとのお出掛けは幕を閉じた。
ように思われたのだが…。
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