14 / 25

14.

西と共に辿り着いた広場は案の定、人混みでごった返している。 「すごい人…」 ぽつりと落とした呟きを拾った西は、少し考え込む素振りを見せて。ひとつ頷くと、繋いだ手はそのままに私を引っ張った。 「え?ちょっと、どこに」 「良いから」 訝しみながら着いて行く。神社の境内に入り、階段を登りきったそこには。 「……わぁ」 思わずため息を零してしまうほどに綺麗な、夜景。小高い丘のようになったここからだと視界を遮る建物も無い。 食い入るように眺める私を笑った西が、緩く手を引いた。 「気に入っている場所だ」 再び眼下に投げられた視線を辿る。 と、 「…!」 ヒュルル、という微かな音と共に咲いた光の華。遅れて響く音が予想よりも近くて反射的に身を竦めてしまう。 それでもやはり間近で見る花火は綺麗で。 揺れた体に気づいたのか、手のひらに込められた僅かな力。大丈夫だと笑おうとして、顔を向けたことを後悔した。 常よりも細くなった瞳に映り込むのは赤、黄、緑。きらきらと形を変えるその光はあまりにも眩しすぎて。 (……あ、) ほとんど無意識だった。手を添えた頬は想像に反して冷たい。 映り込む色が広がって、濃くなって。 「上條」 名前を呼ばれて我に返った。困ったように眉を下げる西。吸い寄せられるかの如く近付いた距離、が。元に戻る。 「…そういう事は、安売りするな」 宥めるように頭をひと撫でした彼は、それきり何も口にしなかった。 知られているのだろうか。自分が背負っているものを。考え無しに放った言葉かもしれない。けれど、あまりにも的を射た内容に跳ねる心臓。 どちらにせよ、明らかな拒絶を受けて痛む心は誤魔化せそうになかった。空いてしまった右手で胸を押さえる。 この優しい男のことだから。もしかすれば、と。 勘違い、していた。

ともだちにシェアしよう!