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14.
西と共に辿り着いた広場は案の定、人混みでごった返している。
「すごい人…」
ぽつりと落とした呟きを拾った西は、少し考え込む素振りを見せて。ひとつ頷くと、繋いだ手はそのままに私を引っ張った。
「え?ちょっと、どこに」
「良いから」
訝しみながら着いて行く。神社の境内に入り、階段を登りきったそこには。
「……わぁ」
思わずため息を零してしまうほどに綺麗な、夜景。小高い丘のようになったここからだと視界を遮る建物も無い。
食い入るように眺める私を笑った西が、緩く手を引いた。
「気に入っている場所だ」
再び眼下に投げられた視線を辿る。
と、
「…!」
ヒュルル、という微かな音と共に咲いた光の華。遅れて響く音が予想よりも近くて反射的に身を竦めてしまう。
それでもやはり間近で見る花火は綺麗で。
揺れた体に気づいたのか、手のひらに込められた僅かな力。大丈夫だと笑おうとして、顔を向けたことを後悔した。
常よりも細くなった瞳に映り込むのは赤、黄、緑。きらきらと形を変えるその光はあまりにも眩しすぎて。
(……あ、)
ほとんど無意識だった。手を添えた頬は想像に反して冷たい。
映り込む色が広がって、濃くなって。
「上條」
名前を呼ばれて我に返った。困ったように眉を下げる西。吸い寄せられるかの如く近付いた距離、が。元に戻る。
「…そういう事は、安売りするな」
宥めるように頭をひと撫でした彼は、それきり何も口にしなかった。
知られているのだろうか。自分が背負っているものを。考え無しに放った言葉かもしれない。けれど、あまりにも的を射た内容に跳ねる心臓。
どちらにせよ、明らかな拒絶を受けて痛む心は誤魔化せそうになかった。空いてしまった右手で胸を押さえる。
この優しい男のことだから。もしかすれば、と。
勘違い、していた。
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