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17.

あの夏祭りの日から、決まって同じ夢を見る。 うるさいはずの花火の音が遠く聞こえて、視界に入るのは艶めいた上條の横顔。嗚呼、やはり綺麗な顔立ちだ。 烟るような睫毛も、今は色とりどりの光に照らされて。その水晶じみた瞳が露わになる。 (人形……) そう、まるで人形。必要以上に踏み込まない、そして、踏み込ませない。浮かべる笑みはどこか計算され尽くしたもの。声も、仕草も、口角の角度でさえ。 (…魅せ方を、知っている) 漠然と、感じた。だから、思わず放ってしまった言葉はきっと、彼の心を抉ったに違いない。あらぬ部分を傷付けてしまったかもしれない。 けれど、傷付いたと見せかける為の演技だとしたら―? そのぐらい容易くやってのけるだろうと考えるだけの何かを、上條は背負っている。 ここまで気になるのは、仲の良い友達だからか。 ―――それとも。 夢の中では彼を拒否しなかった。そうすることが自分の望みでもあると、ごく自然に振舞って。 目の前を浴衣姿の女子が通り過ぎる。 結い上げた髪。後ろ姿に、彼を重ねては頭を抱える日々。 無理矢理にでも、蓋をしておかなければ。 これほど心が重くなる新学期は、初めてだった。

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