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周りの生徒がひそひそと話し合い、そして視線を投げてくる。自分でも酷い顔をしている自覚はあるのだから、そう露骨に振る舞わなくても良いものを。 細くため息をついて、時計に目をやった。今受けている担任の話が終われば、帰宅できる。 終了の号令がかかってすぐ、机横の鞄を手に取る。ざわつき始めた級友の間をすり抜けて廊下へ出た。 「上條」 足を踏み出してすぐ掛けられた声。それだけで誰のものか分かってしまうあたり、自分も大概だ。 "いつものように"取り繕うため、ゆっくり瞬いて目を向ける。 「…ひろ」 変わらぬ態度で迎えたつもりが、曇る相貌。曲がりなりにもそれなりの期間を隣で過ごした友達なのだから、お見通しなのかと薄く笑う。 「少し、話したい」 短く告げた西に頷いて後を追った。 なるべく人目につかないように、と考えたのか。連れてこられたのは裏庭のベンチ。こんな場所があるとはついぞ知らなかった。 渡された緑茶のメーカーは、以前好きだと話した記憶があって。こういう部分が、本当に狡いと思う。彼の手にするコーヒーの銘柄もまた、愛飲しているものだ。 そんな事も分かるようになってしまう。それ程には、同じ時を過ごした。 何故だか込み上げる笑いを、そのまま唇に乗せる。私と対照的に、硬い表情の西。 「…夏休みは、どうしてた?」 「実家に帰っていたよ」 母親の顔を見に。 付け加えれば再び押し黙る。 「宏は?嗚呼、アルバイトかな」 「まあ…あとは子供達と遊んでいた」 そういえば結衣ちゃんは元気だろうか。小さなお姫様を思い浮かべて口元を綻ばせる。ここのところ忙しくて考える暇もなかった。 「実家に、帰った事と」 「うん?」 「…痩せた事は、何か関連があるのか」 深く息を吸った。均衡が崩れようとしている。彼にとって踏み込んではいけない領域、私にとって踏み込まれてはいけない領域。 突き放さなければ。

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