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第7話

「はぁ...」 彼の居なくなった部屋でソファに腰かけ数十分。 何度となく漏れてしまうため息。 今日はもしかしたら16年分の驚きと戸惑いが詰まった1日だったかもしれない。 アンドロイドに「何をして欲しい?」と詰め寄られた僕は「部屋を出ていって貰っても良いですか?」とお願いしていた。 アンドロイドはそんな僕の言葉に何か考え込む素振りをみせたものの「分かった」と一言残し素直に部屋を辞して行った。 これ以上彼と共にいたら頭がおかしくなってしまいそうだった。 僕には明らかに頭の中を整理する時間が必要だったのだ。 改めて、冷静な思考を取り戻した頭でセクサロイドのことを思い返してみる。 あの時は彼の言葉に乗せられ、羽柴家の人間なら彼を造ることも可能なのかも知れないと馬鹿みたいに納得してしまった。 しかし、いくら近年アンドロイドの開発が目覚ましいからといってあんなにも人間に近しい存在を造る段階にまでは到達していなかったはずだ。 見た目や動きもアンドロイド離れしているが、僕が彼をアンドロイドだと信じがたい最たる理由はなんといってもあの知能の高さに他ならない。 淡々と話している様は100歩譲ってアンドロイドだと認めても良い。 ただ、僕の思い違いかもしれないが、僕が腕を捻って呻いた時の一瞬みせた苦しそうな表情、そして帰り際にみせた何か含みを持ったようなあの「分かった」と告げる言葉、それらはどうしてもアンドロイドが成せる技だとは思えないのだ。 ふと、母に聞いてみれば何か彼のことを教えてくれるかも知れないと思った。 彼が本当に造られた存在ならば必ず母も携わっているに違いがない。 ---ああ、でもそれは無理か。 数秒後にそう思い直す。 忙しい母たちが僕の良い呼び出しに応じてくれるとは考えにくい。 ---だって今日まで僕の番がロボットだということすら知らせては貰えなかったのだから。

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