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第11話
「...み、ず...」
譫言のように呟くと唇に柔らかな感触がして、その後冷たい水が口の中に入ってくる。
少しずつしか入って来ないことに焦れ、その柔らかな感触のものに自分から吸い付く。
すると何故か柔らかな感触のものは僕から離れて行ってしまった。
「もっ、と...」
喉の渇きをとにかく早く潤したくてせがむように頼む。
すると直ぐに願いは叶えられ、再びそれが唇にに落とされた。
漸く満足して一息つき、ゆっくり目をあける。
すると目の前にドアップの宮部、いやアンドロイドの顔が映り込んだ。
「え、あ、ぁ...」
驚き過ぎて言葉にならない声が出た。
僕のそんな様子を目に入れながら彼はゆっくり身体を起こすと、僕の額に手を当ててくる。
「熱は下がったみたいだな」
ホッとしたような様子でそういう彼に、そういえばあれだけ火照っていた身体の熱が引いていることに気がつく。
ゆっくりと身体を起こしてみると、多少ダルさは残っているものの特に問題は無さそうだった。
辺りを見回すとベッドに腰かけている彼のすぐ側にワゴンがあって、その上には水差しと、タオルの浸った洗面器が置かれていた。
---もしかして彼が今まで看病してくれていたのだろうか?
朧気な記憶を辿っていくと、確かに僕が意識を失う直前に彼の顔をみていた気がする。
今の状況と照らし合わせてみても彼が面倒をみてくれたと考えて間違いないだろう。
「あの...ありがとうございました」
先程水を飲んだお陰か掠れずに声が出せた。
---え、ちょっと待って。
僕は確かに先程冷たい水が喉を潤してくれたことを覚えているが、自分でグラスから水を飲んだ記憶はない。
それにあの唇に触れた、少し温かくて柔らかい感触。
思わず彼の唇に目をやってしまう。
「感謝されることは何もしていない。それよりも俺の顔に何かついているのか?」
番として当然のことをしただけだと伝える彼が僕の視線に気がつき口許を指で擦った。
その仕草もじっと目で追ってしまっていたが、彼が口移しで水を与えてくれたのだという事実にたどり着き、急に顔の熱が上昇するのが自分でもわかった。
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