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第12話

「顔が赤い。熱はなかったがもう少し休め」 僕が返事をせずに黙ったままでいることに加え、顔が赤い様子からどうやらまだ具合が悪いと判断されたようだ。 勘違いされていると分かりながらも理由を話すことも出来ないし、多少ダルいのは事実なので促されるまま再び横になった。 僕が横になってからも彼はベッドに腰かけたまま動こうとはしなかった。 あの口移しのせいで彼が側にいると全くと言って良いほど眠れる気がせず何度も寝返りをうってしまう。 彼も僕が寝付けていないことに気がついているだろうに、自分のせいだと分かっていないのか部屋を去る気配はまるでなかった。 不意に彼に聞きたいことがあったのを思いだし、どうせ寝れないのだからと彼に話しかける。 「どうしてあの時、僕が倒れたことにすぐ気が付いたんですか?」 唐突に話し出した僕の方に彼が顔を向ける。 急に話しかけてしまったが彼の顔に驚いた様子はみられなかった。 「お前の部屋の前にいたら突然何かが落ちる音がした。声をかけたが返事がなかったので部屋に入ってみればお前が倒れていたんだ。...出ていけと言われているのにこうしてまた入ってきてすまない」 お前の体調が完全に回復したらまた部屋を出ていくからもう少しだけ辛抱してくれ、と彼は続けた。 「部屋の前って...。もしかして僕が貴方に出ていって欲しいと頼んだ時からずっとですか?」 なんで、と問うような目線で彼を見上げる。 「ああ。俺はお前の番だから、この邸の中での俺の居場所はお前の側だと思っている」 ---だから出来るだけ近くにいたと? 彼の思考回路についていけない。 「俺も自分の行動を自分で理解出来ない時がある。何故合理的でないことを思い、合理的出ない行動をとるのか。きっとそれは頭の中にいる彼のせいだろうと俺は結論付けている」 どうやら考えていたことが言葉にして漏れていたようで、僕の疑問に彼はあっさりとそう答えた。

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