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第11話

"かの国"への入り口は、雲の絶え間にあった。分厚い雲が町にのしかかっているが、ナイフを刺した跡のような隙間があり、陽光に混じって"かの国"の光が漏れていた。隙間に沿って身体を滑り込ませる。 光の洪水の中を勢いよく泳いでいくと、突然景色が開けた。 どこまでも広がる草原、豊かに茂るオークの森、万年雪に覆われた山々が、果てしない恵みを与えてくれている楽園。 草原に着地すると、ソラスは私を労い、何やら懐から小さな箱を取り出した。落とさなくてよかった、と目を細めている。人の姿になってからそれは何か聞けば、ノーム達に釣銭代わりにもらった、と中身を見せてきた。 中身は二対の指輪だった。金の指輪には細かな細工が彫り込んであり、"ゴールド・スミス"《金細工職人》の名に恥じぬ逸品であった。 芯にはソラスの髪が使ってあり、魔力を流すこともできるという。 『            』 人間の番が持つものだとカーディスが言っていたと聞き、あいつの入れ知恵だとすぐにわかった。 どこまで私を茶化せば気が済むんだあの男は。 ソラスは私の指に指輪を嵌める。 これであっているのか、とじっと私の顔を見る。 まあいい。本来の作法など。ここは人間の世界ではないし私達は種族さえ違う。 私はソラスの手を取った。 『ソラス、私の伴侶になってくれるかい?』 伴侶とは何か聞かれたので、番のようなもので死ぬ迄生を共有する者だと説明した。 『 』 そんなことか、とソラスは微笑んだ。 元よりそのつもりだったと続ける。 私も連れて笑みがこぼれた。ソラスにも指輪を嵌めてやる。 家まではまだ少し遠かったが歩いて帰った。また竜の姿になっては指輪が壊れてしまう。ソラスに預けてもよかったのだが、なんだか外してしまうことが惜しかったのだ。 繋いだ手には無限の輪《インフィニティ》のように、金の指輪が光っていた。 完

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