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番外編① I like・・・ ※R18
私達の家は森のそばにある。
家の裏が森に面しており、正面には小さな菜園が、少し離れた所には煉瓦を組んだ竈門や薪をおく小屋がある。
家は木造で、玄関から時計回りに机、本棚、中央に暖炉、その前に食事用のテーブルと椅子、右手側には寝台が設置されている。
数年掛かってソラスと"隣人"達の手を借り一から拵えたものである。
本棚の横の机は私が読書や書き物をするためのものだ。本はこちらの世界には無いが、人間が対価として"隣人"に渡したものや収集癖のある"隣人"が集めたものを譲ってもらえた。運が悪ければこれらは焚き付けや巣の材料にされてしまう。
夕食とその片付けが終わってから、ランプの灯りの下で本を読んでいると、また目を悪くするからとソラスに早く寝るよう促される。
切りがいいところまで、と告げるとそんなに面白いのかと返ってきた。
『そうだよ、この筆者が経験したことや発見を形にするまで掛けた時間は計り知れない。一生涯かかった者もいる。私達はそれを1日かそこらで、本を読むだけで知られてしまうんだから』
ハッとして無言になったソラスを見ると、不満げな表情で寝台に横になるところだった。
そうなるともうソラスの方が気になってしまい、とうとう本を閉じた。私も寝台に乗りソラスと横になる。
ソラスは私の方に振り向き、おもむろに初夜とは何をするのか、と聞いてきた。
先に困惑が、次に羞恥が、その次に苛立ちが胸の内を駆け抜けていった。こんなことを吹き込むのは1人しか思いつかない。
あの色惚けの錠前屋め、もしこちらに来たらすぐに追い返してやる。
しどろもどろに説明していると、本には載っていないのかと問われ、ますます困窮してしまった。
ソラスは、やはり何が面白いのか分からない、と私の胸に額を付ける。
本なんか面白くないとポツリと呟いていた。
一緒に読んでみないかと誘うも、黙って首を振る。
『 』
私が本を読んでばかりいるのが嫌だったのだとやっと分かった。これだけのことを知るのにこんなに労力がかかるとは。
しかしそれをいじらしいと感じてしまう私も、あばたに笑窪というやつか。
ソラスを腕の中に納め、背中や頭を摩る。
その内に目が合うと、お互いが引き寄せられるように唇が重なった。
そうなれば後は乱れるのみだった。
ソラスは私にしがみつき喘ぎの合間に私の名を呼ぶ。彼はいくら乱れても、大輪の白い花が揺れるごとく色香を振り撒くのみだ。私の手も舌も腰もソラスを高みに導く為に動いていた。
やがて登り詰めたソラスの背中が反り返る。腹のあたりにぬるりとした感触を覚えた。ソラスは私に絡めていた腕を解き、長く息を吐き出す。
『ソラス、まだ・・・』
寝台に投げ出された彼の手に指を絡ませる。律動を繰り返すうち、目の前に小さな白い光が集まってくる。眩しくて目を開けていられない。きつく目を瞑り、熱く脈打つ下半身に合わせて身体を戦慄かせる。
目を開けると、ソラスは浅い呼吸を繰り返し、額に霧を吹いたように汗が滲んでいた。
ソラスの身体にのし掛かると、背中に手を回された。汗ばんだ皮膚が重なり、身体が一つになるような充足感が胸を満たした。しばし甘美な抱擁に溺れる。
ここでの生活は穏やかで甘やかだ。
だがソラスと人間の世界で過ごす時間も悪くなかった。結局のところ、私は心を寄せられる何かを求めていたのかもしれない。
後始末をして、再び寝台に横になる。
すぐ睡魔が襲ってきた。朝になれば、美しい伴侶が私の隣にいて、朝の挨拶とともに微笑みかけてくれるだろう。
それは想像するだけでも、とても幸福なことだった。
end
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