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番外編② language
夕食後は読書の時間だ。
ここでの生活は空想の世界そのものだが、ふと本の中の世界に独りで潜り込みたい時もある。
だが読書は月が窓から見えなくなるまで、とソラスと約束してある。この日も物語に没頭しながらページを巡っていた。
すると、ソラスが珍しく私の隣に座った。
どういう風の吹き回しだろう。
『 』
一緒に読もうと誘ってきた。
一緒に読めば2人の時間が増えるだろうと微笑む。
正直独りの時間も欲しいという考えもチラリとよぎったのだが消し飛んだ。
ソラスに肩を寄せ、ページをめくる。彼はこれはどう読むのか、と指差しながら聞いてくる。
出来心で台詞を面白おかしく読んでみれば、ソラスは無邪気に声を上げて笑っていた。その反応に気分を良くした私の下手くそな演技にも熱が入る。
子に寝物語を聞かせる父親とはこんな気分なのだろうか。
『 』
これは?と聞くソラスの質問に中々答えられずにいた。暫し別の言葉で訳せないか逡巡したが、やがて観念して言った。
『|Is brea liom tu《愛しています》、だよ』
頬が熱くなるのを感じながらソラスを見れば、もう船を漕いでいた。ランプの火を消し、横抱きにして細い身体を寝台に寝かせる。
私の服を握りしめたままなのがいじらしい。
いつものように腕の中に納め、口づけを交わす。安心したように寝息を立て始めるソラスの寝顔をしばらく眺め、私もやがて目を閉じた。
翌朝、ソラスより早くに目が覚めた私は彼を起こさぬようそっと身を起こした。顔を洗おうと玄関を開けると、光が差し込み机の上に本が開きっぱなしだったことに気づいた。
本を閉じ、本棚に戻すとソラスがむくりと起き上がるところだった。
私の手元をじっと見つめている。
『・・・Is brea liom tu』
心臓が跳ねた。
ソラスは合っているか、と首を傾げる。
私は顔を赤らめてさぞ間抜け面で頷いていることだろう。ソラスの唄うような言葉の調べも好きだが、同じ言葉でも私の国の言語で喋るだけでこんなにも心が乱されるとは。
ソラスの顔に笑みが広がっていく。
『 』
また言葉を教えてほしい、と美しく微笑まれれば、もう私には断る術も理由もない。
こうして私達の日課に読書が加わったのであった。
end
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