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第54話

セイの散々だった歌が終わり マイクを次の人に渡した所で その場にいる全員が ホッとした顔をしていた。 それは俺と直樹も同じで。 耳を塞いでいた手を退け「はぁ。」と 1つため息をつく。 「ユウ!どうやった? 惚れ直しか?」 そんな反応を周りにさせたセイが 戻って来た。 アホか。惚れ直すわけないやろ… そんな事をコイツに言えないので、 「まあまあやったー」と笑みを添え曖昧に返した。それしか出来ない。 無自覚音痴、恐るべし。 ・ ・ ・ 次は、直樹の番。 セイによって微妙だった空気がやっと戻った。 セイと直樹の間には4人いるのだが、 セイが作ったあの微妙な空気の中乗り切ってくれた。君ら4人がいたから空気が元に戻りました! ありがとう! そして、うちのセイがごめんなさい。 「では、次の方どうぞー!」 「これ(本人の前で)歌うの恥ずいけど 1番得意だから歌う!」 括弧の中聞こえたぞ…俺には。 そんなん気にせんと歌ってくれたらええのにな! そして、直樹の歌がはじまった。 「♪〜」 あー、これか! これは…俺が恥ずい。 本人の前云々よりも歌詞的に恥ずい。 何故か? サビをお聴かせいたします。 『貴方の瞳の中に入れるのも 貴方と同じ空気が吸えるのも 全部俺だけ。 なのに、なんで? なんで、他のやつを瞳に映す? なんで、他のやつらも貴方と俺だけの空気を吸うことができる? この世界から俺とお前以外全員消えればいいのに。 もう、許せない。 いっそ貴方を閉じ込めてしてしまおうか。』 本当に恥ずかしい。 これはね、唯一俺が書いた歌詞じゃないんです。 なら、誰が書いたか… 伊吹だよ。さすが、翡翠の兄。 あの兄弟思考がよく似ている。 ちなみにこれは、 付き合ってない片想いの相手へ書いた歌らしい。 歌詞には他にこんなのもある。 『なんで、あの人はお前の部屋に入れるのに 俺は入れないの? なんで、あの人の方がお前に近いの? お前と一緒に学校行くのも バイト先に行くのもお出かけするのも 全部いつも俺と一緒なのに。 いつも見る君の後ろ姿にキュンとしてる。 たまには、横からでも前からでもいいから 違った所からのお前を見たい。』 あれよね、片想いこじらせ過ぎてストーカーになってるヤツの歌。 脳内では、付き合ってんだよたぶん… まじこれ作った伊吹が怖い。 これが1番得意とか言う直樹も怖い。 俺の歌だけど… これ本当に歌詞見た時から恥ずかしすぎて、 あー、黒歴史刻んじゃったなって思いました。はい。 絶対売れないと思っていたのに この歌メンヘラ系の女の子達の間や執着強い系男子達の間で好評でよく歌われているらしいです。

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