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第78話
「アイツは?」
体育館内の空気が一気に下がった気がする
いや、下げたのは俺だけど
まあ、残ってるのは俺とこの女と
学校関係者だから問題は無いだろう。
1番近い所にいる杏椰と嵐はこちらの様子を
窺っているようだ。
「アイツ?あぁ!お父さんの事?
お父さんなら仕事中よ。貴方の学校で文化祭があるって聞いたから来ちゃった!」
この女は、父の彼女だ。
あぁ。なんとなく臨也の所に行った絵に書いたようなブスはコイツだったんだなと分かってしまった。
今更俺になんの用だろうか。
一生会いたくなかった。
心のずっと奥に封印し開けることの無い
パンドラの箱がこじあけられようとしている。
「で、何?」
自分でも驚くぐらい冷めた声が出た。
聞きたくないけど、俺の事をコソコソ嗅ぎ回っているのがコイツだとしたら臨也の言っていた奴がコイツだとしたら
後々知らなかったことを後悔する事になるかもしれない。
「貴方にはまた私の道具になってもらおうと思って。その時が来たら迎えに来るから楽しみに待っててね。逃げちゃダメよ。」
「いや無理」
道具になれとか無理に決まってる。
アホか逃げるわ普通に。
「ふふっ、そうねぇ。
貴方が絶対に逃げられなくなる物持ってるの
芸能界でいられなくなっちゃうかもよー?」
「はぁ?そんな物本当にある訳?」
逃げられなくなる物 ねぇ…
気になるっちゃ気になる。
「あるわよ!
…ほらコレよ!ね?いられなくなっちゃうでしょ?」
「…っ!?」
そう言って彼女が見せてきた物
ああ。
これは本当に芸能界にはいられなくなるわ。
そこには…
随分年上の男3人に囲まれ
精液まみれになっている俺
が写っていた。
本当に最悪すぎる。
こんな物をマスコミにでも流されたら
そりゃ終わるだろう。
俺の反応を見て
女は勝ち誇った笑みを浮かべ
「それじゃあまた連絡するわね。」
と連絡先を書いた紙を置き去っていった。
彼女が置いていった紙を見ていると
「ひー!大丈夫か?」
「緋悠様!大丈夫ですか?」
2人が駆け寄ってきた。
それもすごい形相で。
ついに耐えきれなくなり
「ははっんぁ、あははは!
あー腹痛いっ!」
俺は大爆笑。
2人は何事かと固まっている。
「見た?アイツのあの顔
めっちゃウケる!」
「え…ひー?え?」
「緋悠様?さっきの…え?大丈夫ですか?」
コイツ頭大丈夫か?みたいな目で見ないで(笑)
「アイツが来たこともアレを見せられたのも
最悪だけど…
俺の職業なんだと思ってるわけ?
いかにも傷つきました。って演技とか余裕。」
「え、演技か…すげぇなひー!」
「さすが緋悠様!」
2人は納得し片付けに戻って行った。
そう、さっきのはアイツを騙すための演技。
何故?そんなの早く帰ってほしいからに決まってる。
あの写真は残念ながら本物だ。
俺は昔アイツの母親についている男に
金儲けの道具にされていた時期があったんだけどそん時にあの写真に写っていた男共にレイプされた。
マスコミに流されれば大変な事になるだろうが、アイツはアレで俺を脅す事は出来るけどアレを本当にマスコミに流す事は出来ない。
あの女は昔から自分の思い通りにいかない事があると自殺未遂をし脅してくる。
相手を思い通りに動かすために自分が死なない程度にし、後で「貴方のせいで!」と言い罪悪感を植え付けてくる。
つまり、彼女お得意の自殺未遂にしても
今回のマスコミに流すにしても
構って欲しいがために相手を自分の思い通りに操るための方法に過ぎない。
ね?最悪な女でしょ?
あの女のどこが良いのか俺には理解不能だ。
あの女もあんな女に上手いこと転がされている父親も嫌いだ。
彼女が置いて行った連絡先を破り捨て近くにあったゴミ箱に捨てた。
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