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第3話
かじかむ手に白い息を吐きかけて、此処じゃなかったか? と首を傾げると、俺は辺りを見渡した。
滑り台と砂場とベンチしかない、小さな公園は、年の瀬という事もあり、子供の気配も、勿論大人の気配も皆無だった。
広くはないけれど、一人でいると感じるには広すぎる空間の隅っこ。
俺は目隠しに植えただろう椿の根元で、とりあえず掘ってしまった無駄な穴を埋めていく。
この椿ではなかったか。じゃあ隣か?
俺は隣の赤い椿の咲く、木の根元へと移動した。
公園の入り口から真っ直ぐ進んだ、椿の根元。目印で覚えているのはそれだけだった。確か真ん中だったと思うけれど、と再び石を握り直すと、
「和希?」
不意に呼ばれて、反射的に振り返ると、随分と背の高い男が覗き込むように俺を見下ろしていた。
翳って暗いその表情と声に、一瞬誰だ? と、間を置いてから、心臓が大きく跳ね上がるのを感じた。
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