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第一章・6
「あ、そういえば弦先輩、今日から体育が柔道になるって言ってたっけ」
一限目の体育が柔道となると、いつもよりお腹がすくだろう。
おむすび二個では足りないかもしれない。
そう思った千尋は、自分用に作った弁当をおむすびの代わりに弦のバッグへ入れた。
自分はあまり食べるほうではないので、お昼がおむすび二個でも大丈夫だ。
「先輩、お弁当バッグに入れましたからね?」
「ああ」
先に玄関から出る千尋。
二人そろって一緒に登校することは滅多にない。
だが、そっと後をつけるように、弦が寮を出ることを千尋はちゃんと知っている。
そんな不器用な愛がまるで本当の家族のようで、千尋は嬉しかった。
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