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第二章 だめだよ、先輩。僕たち、男同士なんだよ!?

「弦(げん)先輩、お願いがあるんですけど」  梅雨明けがようやく間近と予報されるテレビニュースを見ていた弦にお茶を出しながら、男子寮同室の 千尋が笑顔を向けてきた。    なんだ、と向き直る弦。  千尋は手の中で湯呑をいじりながら、弦にそのお願いとやらを口にした。 「今度の白南風祭で、僕のクラスにぜひ来てもらいたんです」  白南風祭(しらはえさい)。  梅雨明けの頃に行われる、鳴矢高校のちょっとした文化祭だ。    多くの三年生は、この夏休みで受験勉強の天王山を迎えたり、クラブ活動最後の大会に出場したりする。  そんな彼らを激励しようと一年生・二年生が中心となって盛り上げる生徒主体のお祭りだ。  クラス単位で出店を出して、三年生をお客に迎え楽しんでもらうというこの企画、弦は『お店屋さんごっこ』と称して鼻で笑っていた。

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