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第二章・5
放課後、このところだらだらと教室に居残る弦の姿。
遅くまで残って出し物の準備をする千尋を、待っているのだ。
肩を並べて帰ることはしないが、後輩の後ろから見守るように下校するのは弦の習慣だった。
明日が祭りの当日なので追い込み作業をやっているのか、今日は少々遅かった。
「海江田クン、まだ帰らないの?」
同じクラスの女子、坂井(さかい)が話しかけてくる。
あぁ、とだけ短い返事をした弦に、坂井はにんまりと笑った。
「ねぇ、もしかして河島くん待ってるとか」
なぜそれを、と思いつつも、別に、とだけまた短い返事をした。
だが、それを聞いた坂井は、ほかの女子数名と頭を寄せ合いキャッキャとはしゃいでいる。
女とはどうしてこう些細なことで笑うのかと内心うんざりしながら、弦は暇つぶしの本に目を落とした。
「ねぇねぇ、海江田クン。河島くんのこと、好き?」
後輩なんだから、好きに決まってるだろう。
その程度の考えで、弦はみたび短く返事をした。
「あぁ」
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