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第二章・12
「先輩、寝てなきゃダメですよ」
「いや、起きているほうが楽なんだ」
一人で布団の中で悶々としている分にはなんの不都合もなかったが、千尋が帰ってきてしまった。
彼の気配を感じながら暗がりに潜んでいると、坂井のいかがわしい本の事が嫌でも思い出されてしまう。
『先輩。僕、先輩のことが……』
などと言いながら、寝室に千尋が入ってくるような錯覚に襲われる。
日常の中で動いている千尋の姿が見えた方が、マシだった。
いらぬ妄想も浮かんでこないというものだ。
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