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第二章・13
「弦先輩」
「なッ、何だ!?」
「お味噌汁の具は、おとうふでいいですか?」
安堵の息をつく。
そうだ、これだ。
これが普通なんだ。
ようやく人心地ついた弦は、さらに平常心をとり戻そうと、テレビをつけた。
ニュースはすでに終わっており、巷で話題のドラマが始まっていた。
人気女優とイケメン俳優が、向き合って何かしゃべっている。
『先輩! 私、先輩のことが好きになってしまったの!』
『そんな……俺たちは、同僚なんだぞ!?』
ブツン!
「あれ? 先輩、テレビ消しちゃったんですか?」
はあはあと冷や汗を流す弦に、千尋は無邪気な笑顔を向けてくる。
「見ましょうよ。これ見ておかないと、明日友達の話題についていけないんです」
「くっくだらん番組を見るな!」
「ヤです。リモコン貸してください」
「ダメだ!」
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