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第二章・15
幼いころに、いつも抱きしめていてくれた温かい胸。
あのころに比べて、ずいぶん広くたくましくなっている。
自分だってそれなりに体は作ったつもりだが、到底先輩にはおよばない。
もう少し、こうやって甘えてたいな。
だが、これ以上すがりついていると惰弱と笑われそうだ。
「と~った♪」
千尋は弦の手からリモコンを奪うと、掲げて笑ってみせた。
赤くなり、顔を背ける弦の姿がそこにある。
いかにも先輩後輩のふれあいだな、などと呑気な事を考えながら、千尋はリモコンのスイッチを入れた。
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