41 / 239
第二章・26
「河島、キスだ! 先輩に、キスしろ!」
ぎょっとして振り返ると、いつの間にかメイド男子が現れ囃し立てている。
そうこうするうちに、セーラー服やらスク水やら、バニーちゃんやらがわらわらと集まってきていっそう騒ぎを大きくする。
「キ~ス! キ~ス! キ~ス!」
手拍子で、囃し立ててくる。
千尋に目をやると、怒るどころか頬を染めてうつむき、もじもじしているではないか。
「ばッ馬鹿もん! いいかげんにせんか!」
人垣を無理やり割って、弦は逃げ出した。
メイド服、恥らう仕草、そしてこの上キスまでされてしまっては……。
(後戻りできなくなる!)
その日、弦は早退した。
ともだちにシェアしよう!