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第二章・26

「河島、キスだ! 先輩に、キスしろ!」  ぎょっとして振り返ると、いつの間にかメイド男子が現れ囃し立てている。  そうこうするうちに、セーラー服やらスク水やら、バニーちゃんやらがわらわらと集まってきていっそう騒ぎを大きくする。 「キ~ス! キ~ス! キ~ス!」  手拍子で、囃し立ててくる。  千尋に目をやると、怒るどころか頬を染めてうつむき、もじもじしているではないか。 「ばッ馬鹿もん! いいかげんにせんか!」  人垣を無理やり割って、弦は逃げ出した。  メイド服、恥らう仕草、そしてこの上キスまでされてしまっては……。 (後戻りできなくなる!)  その日、弦は早退した。

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