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第二章・32

 思わず、目を閉じた。  同時に、唇に温かな感触が。  そっと触れたそれは、しばらく後、やはり静かに離れていった。  キス、しちゃった。  弦先輩と、キスしちゃった。  心臓が、飛び出しそうに高鳴っている。  頬が、熱をもったように火照っている。  わずかな背徳感を大きく上回り、驚きと喜びの方が勝っていた。  離れていった弦の顔は穏やかだった。  今まで見た表情の中で、どれよりも優しかった。

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