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第三章 先輩。口でして、いいですか?

「あっ!」  朝食の席、サラダのミニトマトを取りこぼした河島 千尋(かわしま ちひろ)が、あわてた声を上げながら跳ねるトマトを追う。  テーブルをぽんぽんと跳ね転がった後、あと一息というところでミニトマトは床に落ちていった。 「あ~あ」  しゅん、としてフォークをくわえる千尋の姿。  海江田 弦(かいえだげん)はにっこり笑うと、かわいい後輩に声をかけた。 「千尋」  え、と顔を上げると、テーブルを挟んで向こうから弦が乗り出している。 「あ……」  唇を重ねてふさいでくる弦。  ちゅ、と音を立てて、すぐに離れていった。  

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